生コンクリートを製造販売する上で、今まではJISの品質項目を満足すれば合格であり、出来上がった構造物の耐久性については圧縮強度以外の特性をほとんど把握していないのが実情でありました。昨今のテレビ、新聞等の報道にあるように本来100年以上はもつと言われていたコンクリート構造物が数年〜数十年で"塩害""アルカリ骨材反応""早期劣化""中性化"等により被害を受けています。 そこで当社では、自社製品の耐久性に関する確認試験結果を情報開示し、安心して当社の製品をご使用して頂けるようにいたしました。 |
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試験に供した配合は、名古屋工場でもっとも出荷量の多い呼び強度27の配合と、高性能AE減水剤を使用した呼び強度36の配合について、スランプ値で土木用(8cm)、建築用(18cm)に区分して行いました。また、特殊コンクリートとして大臣認定配合(60-60-20N)と、アルカリ骨材反応性試験比較用の山砂100%使用した大臣認定配合(60-60-20N)および、石灰石微粉末をセメントの外割で混合した土木用高流動コンクリート(−-67.5-20N)を加えた合計7配合について行いました。また、データの検証用として宇部三菱セメントの技術資料を参考値として用いています。
試験項目及び試験方法
試験項目 | 試験方法 |
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ブリーディング試験 | JIS A 1123 |
凝結試験 | JIS A 1147 |
圧縮強度 | JIS A 1108 |
静弾性係数 | JIS A 1149 |
乾燥収縮 | JIS A 1129-1 |
アルカリ骨材反応 | JCI AAR-3 |
凍結融解試験 | JIS A 1148 A法 |
使用材料
使用材料 | 産地 | 材料の品質 | |
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セメント | 宇部興産(株) | 密度3.16g/p3 比表面積3330p2/g 全アルカリ0.56% | |
水 | 工業用水 | − | |
細骨材 | 陸砂 | 三重県員弁郡 | 表乾密度2.60g/p3 吸水率2.17% |
山砂 | 愛知県瀬戸市 | 表乾密度2.56g/p3 吸水率2.09% | |
粗骨材 | 砕石2005 | 岐阜県南濃町 | 表乾密度2.67g/p3 吸水率0.86% |
砕石2005 | 三重県菅島 | 表乾密度2.98g/p3 吸水率0.72% | |
混和剤 | AE減水剤 | フローリックSV | リグニンスルホン酸とオキシカルボン酸 |
高性能AE減水剤 | フローリックSF500S | ポリカルボン酸系化合物 | |
混和材 | 石灰石微粉末 | 近江鉱業(株) | 密度2.70g/p3 比表面積5090p2/g |
実験配合
配合 | 特記 |
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27- 8-20 N | AE減水剤 JIS配合 |
27-18-20 N | |
36- 8-20 N | 高性能AE減水剤 JIS配合 |
36-18-10 N | |
60-60-20 N | 高性能AE減水剤 大臣認定配合 |
W/P30-67.5-20 N | 高性能AE減水剤 石灰石微粉末使用 高流動コンクリート |
コンクリートのブリーディング試験結果
呼び強度27配合のブリーディング率は、単位水量の増加に比例して大きくなりました。宇部三菱セメント技術資料によるとW/C55%、単位水量163s/m3、目標スランプ12pのコンクリートのブリーディング率が4.17%であるので、今回の試験結果は妥当と考えます。高性能AE減水剤を使用した呼び強度36配合は、単位水量が少ない為ブリーディング率も小さくなりました。高強度・高流動配合については単位粉体量が約200s/m3 多い為、ブリーディングは殆どありませんでした。
コンクリートの凝結時間
コンクリートの凝結時間は、普通コンクリートの配合は、単位水量の増加に比例して長くなりました。また、その結果は宇部三菱セメント技術資料と同等でありました。高強度配合の凝結時間は、技術資料と比較して大幅に長くなっています。これは、高性能AE減水剤の主成分と添加量による影響と思われます。W/P30%高流動コンクリート配合は、高強度コンクリートと同一の添加量で高性能AE減水剤を添加していますが、凝結時間は普通コンクリートと同等でありました。一般に石灰石微粉末はエーライトの初期水和を促進し、コンクリートの強度発現性状を向上されることが知られています。このコンクリートは、石灰石微粉末を外割で多量に添加しており、石灰石微粉末がセメントの水和を促進し、高性能AE減水剤の遅延効果と相殺されたものと思われます。
コンクリートの圧縮強度
呼び強度27及び36の材齢28日強度は、当社の目標強度を上回りました。また、長期強度の伸びもよく、半年程度までは強度が増進することが確認できました。今回の試験は、室内試験で行っているため、条件が良かったものと思われます。また、技術資料との比較では、セメント水比と強度の関係式に乗っており、ほぼ同等の強度発現性でありました。高強度コンクリートについても材齢28日強度は目標強度を上回りました。長期強度の伸びは、普通コンクリートよりもよく材齢1年後も大幅な伸びを示しました。高流動コンクリートは、石灰石微粉末添加の効果で初期強度発現性は良かったものの、材齢28日以降の強度の伸びは小さい結果となりました。
コンクリートの静弾性係数
コンクリートの静弾性係数は、今回試験を行ったコンクリートの種類や圧縮強度によらず、土木学会式でよく近似できました。また、ポアソン比も石灰石微粉末を使用した土木用高流動コンクリートで若干低い値が出ましたが、その他はおおむね、0.18〜0.2の間に収まりました。
コンクリートの乾燥収縮
コンクリートの乾燥収縮供試体の養生は、簡易的な保管方法をとったため、初期材齢湿度にばらつきが大きく平均で70%前後あり初期材齢の測定値は技術資料よりも小さい値で推移しました。しかし、材齢4週以降は、平均湿度65%以下で推移しており、最終的な収縮量はほぼ同等であると考えられます。高強度配合は、重量減少率がもっとも少ないにもかかわらず、収縮量は呼び強度27の配合と同等となりました。高強度配合はセメント量が多く、水セメント比が小さいので自己収縮の影響が大きく現れたものと思われます。高流動配合は、高強度配合とは反対に、重量減少率は呼び強度27配合と同等だったのに対し、乾燥収縮は、今回測定を行った配合の中で最も小さくなりました。一般的には、石灰石微粉末が最終的な収縮量に及ぼす影響は小さく、結合材に外割置換した場合には、収縮量は変化しないか低減され、内割置換の場合は乾燥収縮は大きくなるが自己収縮は低減されます。今回の結果は、その結果と同様でありました。しかし、石灰石微粉末を使用したコンクリートの収縮挙動は、十分に解明されていないのが現状です。
コンクリートのアルカリ骨材反応性
アルカリ骨材反応性を判定するための試験方法として現在JISではJIS A 1145 骨材のアルカリ反応性試験方法(化学法)、又はJIS A 1146(モルタルバー法)にて、骨材自体の反応性の有無を確認する試験を行っています。しかし、アルカリ骨材反応による有害なひび割れは、アルカリシリカ反応性だけでなく、セメントの種類、セメント量、骨材の混合割合等様々な複合的な要因によって引き起こされます。
コンクリートのアルカリシリカ反応性をより正しく判定するには、実際に使用する配合のコンクリートで判定試験を行うのが必要と考えました。今回、当社の代表的な配合、セメント量の多い(総アルカリ量が多い)配合、又材料の混合比率の違いによる差を確認するために山砂100%の配合、の4種類を実施致しました。
JCI AAR-3の試験方法では『供試体3本の平均膨張率が、6ヶ月後に0.100%未満の場合は、対象としたコンクリートは「反応性なし」と判定し、0.100%以上の場合は「反応性あり」と判定する。』とされています。膨張率0.100%は400マイクロメートルに相当するので、今回の測定結果では、全ての配合において「反応性なし」と判定できました。
コンクリートの凍結融解試験
当社の供給地区である名古屋地区は、最低気温が零度を下回る日が気象台平年値(1971〜2000年)で8日間しかありません。従って照査は必要ではありませんが、高強度コンクリートの凍結融解についてデータを取るため実施致しました。高強度コンクリートは、目標空気量3.0%にて実施した為条件的には厳しいですが、最終の300サイクルで48Nが0.1%、54Nは88%、60Nは100%であり、すべて60%以上を満足いたしました。質量減少率も最終300サイクルで0.1%以下であり良好な値となっています。